地方中小企業の経営者をしていた時にチェックしていた数字
私の会計知識は簿記3級レベル。
簿記2級の試験には合格していますが、
それほど数字は得意なつもりはありません。
売上50億円規模の会社で
経営者をしていた当時に、
どのような数字を気にしていたかを書いてみます。
資金繰り
まず気にしていたのは
会社の資金繰りです。
私が家業を事業承継した時点で
実質的に取引金融機関からの支援がなければ
事業は存続し得ない状況でした。
ざっくり言うと、
自社の努力だけで
資金を回すことが出来なかったのです。
この状況を数字で把握するためには
売上がどうとか、費用がどうとかではなくて
会社の手元にある現金の残高を知る必要があります。
つまり資金繰り表の次月繰り越し額が、
プラスになっているのか
マイナスになっているのかを
将来に向かって見ていくのです。
次月繰り越し額がマイナスであれば、
当月中に資金ショートする可能性があるということ。
収入を増やすか、支出を減らすかして
次月繰り越し額を必ずプラスにしなければなりません。
重要なのは当月の数字だけに囚われるのではなく、
将来の数字をチェックしていくこと。
数ヶ月先の数字まで把握していき
次月繰り越し額がプラスで推移するように
収入と支出を管理していくのです。
家業の場合、ある時から、
それまで万円単位だった資金繰り表が
千円単位のものに変更されました。
業績が悪化し続けていたので、
より緻密に資金管理をする必要に
陥ってしまったということです。
この時のヒヤッとした感覚は
今でも忘れることはできません。
数字を苦手だという経営者もいますが
最低限、自社の資金繰り表は見る必要があるでしょう。
個店ごとの利益
私の家業は
百貨店やアウトレットに出店していたので
全国に多数の店舗を構えていました。
管理会計システムはだいぶ以前に導入していたので
店舗ごとの利益の状況を把握することができました。
各店舗の売上、
管理可能費(人件費、光熱費、家賃など)は
当然、現場の人は把握しています。
売上を増やそうと営業活動をしていますし、
スタッフの人件費や光熱費は抑えようと努力してくれます。
これに加えて、
会社を運営していくために必要な
管理外経費(物流費、管理部門の人件費など)は
一定のルールで各店舗の費用として配賦しています。
経営者は店舗の表面上の売上に一喜一憂することなく
各店の真の利益貢献度を数字で把握しなくてはいけないのです。
ある時、
金融機関から紹介された大手コンサル会社がやってきました。
再生計画を会社と一緒に立案すると言うのです。
まずは財務の資料を確認したいとのことで
必要な資料を網羅したリストを渡されました。
上述のように管理会計の仕組みは整えていますので
財務諸表はもちろん、
過去に遡って利益構造を示す資料を提出しました。
この際に大手コンサル会社の担当者に言われたのが
「地方中小企業でここまで資料を整えている会社は少ない」
ということでした。
私にとっては驚きで
部門ごとの利益を把握しようとせずに
どのように経営できるのでしょうか。
もちろん数字を把握したからといって
それだけで業績が担保されるわけではありません。
家業は経営破綻し、
投資ファンドに事業譲渡したわけですし。
それでも日々の会社を経営していくには
羅針盤は必要なわけで、
羅針盤に相当するのが数字の資料です。
家業が資金繰り破綻する前に
投資ファンドに事業譲渡することができたのは、
過去から整えていた管理会計システムなど、
「守り」をしっかりと固めていたという要因も大きいです。
買い手候補が
ブランドなどに価値を感じてくれたからといっても
事業の実態を把握できないような会社は
怖くて手を出すことができないでしょうから。
従業員の誕生日
私が使用していた「ほぼ日手帳 Weeks」には
従業員の生年月日を記載していました。
年齢順に書いておくことで、
誰から順番に定年を迎えていくかを
いつでも思い出せるようにしておいたのです。
経営者の責任の1つは、
従業員に幸せに退職してもらうこと。
誰がいつ定年を迎えるのかを把握しておき、
自分の果たす責任を忘れないようにしていました。
毎年手帳を更新する度に
定年退職者や早期退職制度に応募する人が発生し、
人数が減っていくメモ。
自分の責任がふっと軽くなると同時に、
残された経営者として寂しさを感じる瞬間でした。
「数字が苦手」というのは
ほとんどの経営者が大なり小なり感じていることです。
そこで勉強することから逃げるのか、
逃げずに立ち向かっていくのか。
経営者は事業を預かる立場なのですから、
苦手を苦手のままにせずに、
知識を身につけていきたいものです。
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