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コラム

中小企業支援家・経営コンサルタントに求められる職業倫理

社会保険労務士として登録しているので
5年に1回、職業倫理に関する研修の受講が義務づけられています。
では、中小企業支援家・経営コンサルタントには
どんな職業倫理が求められるでしょうか?

社会保険労務士の義務と責任

社会保険労務士法というのもあるのですが、倫理綱領で「品位を保持し、常に人格の陶冶にはげみ、旺盛なる責任感をもって誠実に職務を行い、もって名誉と信用の高揚につとめなければならない」と定められています。

企業や労働者の高度な機密情報に接しうる業務なので、法に加えて倫理綱領を定め、さらに研修を実施して一人一人にしっかりと落とし込む体制が築かれています。

一. 品位の保持
社会保険労務士は、品位を保持し、信用を重んじ、中立公正を旨とし、良心と強い責任感のもとに誠実に職務を遂行しなければならない。

一. 知識の涵養
社会保険労務士は、公共的使命と職責の重要性を自覚し、常に専門知識を涵養し理論と実務に精通しなければならない。

一. 信頼の高揚
社会保険労務士は、義務と責任を明確にして契約を誠実に履行し、依頼者の信頼に応えなければならない。

一. 相互の信義
社会保険労務士は、相互にその立場を尊重し、積極的に知識、技能、情報の交流を図り、いやしくも信義にもとる行為をしてはならない。

一. 守秘の義務
社会保険労務士は、職務上知り得た秘密を他に漏らし又は盗用してはならない。業を廃したあとも守秘の責任をもたなければならない。

実務上、重要なのは最後の「守秘義務」でしょう。いちいち個別具体的な案件ごとに秘密保持契約を交わさずとも、信頼して情報を提供してもらえる姿が望ましいわけです。もちろん、守秘義務は社会保険労務士が何らかの理由で事務所を閉鎖した後にも課せられます。

中小企業支援家・経営コンサルタントに求められる職業倫理

中小企業を支える、経営コンサルタントや専門家などにも職業倫理は必要です。しかし、無資格でも業務を行うことができるのがこれらの人々。倫理綱領があるわけではないので、中には業務に前向きに取り組むあまり、脇の甘い方も散見されます。

例えば事業者のOKを取らずに支援事例を講演などで開示してしまう人。「ここだけの話ですよ」「スライドの画像は撮らないでください」というのは言い訳にはなりません。

悪質なのは明らかに守秘義務を意識していない人。他業務で取得した名刺情報や企業情報を流用したりしてしまいます。そういった人物から支援を受ける中小企業は、一見、自社には影響がないように考えてしまいがちですが、自社の情報がどこでどのように取り扱われているのかを想像してみたら、望ましくない人物に関わられてしまっていることは明らかでしょう。

私が対外的に発表している支援事例はすべて事業者のOKを取得しているものです。特にメディアに寄稿したり、プレスリリースを発信するような支援事例については、表現の詳細を念入りに確認した上で公表しています。

新聞に寄稿する場合、私がざっと書いた下書きの段階で、まず目を通してもらいます。この時点で修正依頼が入ることもしばしば。微妙な表現についても指示があれば修正するのは当然です。さらに新聞社の手が入った後、校了前の原稿もチェックしてもらいます。ここまで念入りに事業者の意向を確認した上で、対外的に発表できる事例となるわけです。

前項では社会保険労務士の義務と責任を紹介しましたが、「社会保険労務士」を「経営コンサルタント」や「専門家」などと読み替えると、中小企業を支援する側にも当てはめうる内容になっていると私は考えています。

自分自身が社会保険労務士として、高度な義務と責任を課せられているからこそ、中小企業支援家としての活動においても、同様の義務と責任を自分に課すようにしています。

会議室の長机と椅子

私の次回の倫理研修はオンラインで実施するそうです

こんな「経営コンサルタント」「専門家」には気をつけろ

・守秘義務を保持している人物なのかどうかわからない

・自らの守秘義務について説明できない

・取得した名刺や企業情報の取り扱いについて説明できない

このような経営コンサルタントや専門家は要注意です。士業であれば、法律からも業界団体からも、厳しい義務と責任を課せられているのでまず問題ありません。

一方で、民間企業OBOGなどが支援機関で働いている場合は、自らの業務の守秘義務について意識が低い場合があります。どのような守秘義務を課せられている立場なのか、預かった情報をどのように取り扱うのか、このあたりを即座に説明できない人とは関わらないことを強くお勧めします。

社会保険労務士の倫理綱領の一つ目に掲げられているのは「品位の保持」です。本来はこの一項だけでも用は足りるくらい重要なもの。自らの支援内容に価値があることは当然ですが、その前提として品位が保持されていなければ、中小企業に関わる資格はありません。

私はたまたま社会保険労務士と中小企業支援家の二足のわらじを履いているので、職業倫理について常日頃から意識しています。今後も油断することなく自らを律して、地方中小企業に関わっていきたいと考えています。

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