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コラム

他社の労務トラブルから学びを得る

家業の代表取締役を務めていた際に
どんなものを読んでいたかをご紹介します

なぜ社会保険労務士資格を取得したか

社長に就任して1年目に
社会保険労務士試験に合格しました。

なぜ資格取得を目指したかというと、
ぬるま湯体質の家業において
労務管理に関しては
自分が責任を持って対応したかったからです。

1990年頃をピークに
業績は緩やかに下降し続けていましたが、
社内の危機意識は高まりません。

百貨店やアウトレットでの店頭の商売は
基本的に売上がゼロになるような日が無いからです。
「日銭が入る」という状態です。

困難な状況下で
従業員を満足に処遇できないわけですから、
労使の話し合いが生まれます。

その際に、社会保険労務士資格が生きるのです。
資格と知識に基づいて対話できるので、
労使の健全な関係を築く礎になりました。

労働経済判例速報を読んでいた

社会保険労務士試験に合格して
真っ先に購読を始めたのが、
「労働経済判例速報」です。

https://www.keidanren-jigyoservice.or.jp/pub/flash.html

労働経済判例速報は、労働判例や労働委員会命令の中から、特に重要なケースを厳選し公正な論説・解説を加えて読者に迅速にお届けします。職場における労使関係のトラブル防止のためにも役立ちます。
1950年の創刊以来、望ましい人事管理、健全な労使関係の確立をめざす法律指針として発行してきました。これからも引き続き時宣に適した判例や命令を取り上げ紹介していきます。法務担当者はもちろん経営者、管理者、総務、人事・労務、教育の各担当者にも必読の情報誌としておすすめします。

ざっくり言うと、労使が揉めて、
裁判で判決まで至った事例を紹介しています。
薄い冊子で、刊行されるのは毎月3回。
当初は読み慣れない判決文でしたが、
目を通し続けていると
何となく読解力も向上していきます。

・そもそもどのような案件で揉めたのか
・労働者側の請求は何か
・経営者側の反論にどんな根拠があるのか
こういったことを読み取れるようになります。

私の場合は
出張時に数冊持ち運び、
新幹線で読むか、
ホテルで風呂に入りながら読むことが多かったです。

溜め込んでしまうと
読み進めるのが億劫になるので
できるだけさっさと読むように心掛けていました。

バインダーに挟まれた就業規則とペン

労使の信頼関係を築くには経営者に労務管理の知識が必要です

他山の石にすることができた

労働経済判例速報を読んでいたことで
労使の大きなトラブルを抑止することができました。

もちろん多少の案件は発生しましたが、
300人規模の会社であったので想定内でしょう。

他社の紛争事例を他山の石とすることで
解決のための無駄な時間とコストに
貴重な資源を費やさずに済んだのです。

象徴的なのが、
投資ファンドに事業譲渡することを
従業員に説明した日の出来事です。

自分たちが在籍している企業が経営破綻し、
投資ファンドに買われるわけですから
説明会は紛糾することもあり得ると思っていました。
すべての従業員が移籍できるわけでもなく、
退職金もリセットされてしまうことになるからです。

カメラを回していたファンド関係者も
そんな場面を予測していたのかもしれません。

実際に説明会を始めると
まったく紛糾することなく
淡々と終了していきました。

私は土下座を求められたり、
罵声を浴びて
お叱りを受けることも覚悟していたのですが
そのような事態にはなりませんでした。

これにはファンド関係者も驚いたようで
「従業員説明会は何度も経験しているが
今回のように揉めなかったのは初めてだ」
というようなコメントを残していました。

事業譲渡のギリギリの局面でも
労使が信頼関係を失わずに済んだのは
日頃から健全な関係を築けていたからだと思います。

私自身が社会保険労務士であり、
他社事例から学びを得ていたからこそ
従業員に敬意を持って接することができました。

人財の価値を最大限に引き出そうとする
人的資本経営が話題になっています。

従業員に大きな価値を生み出してもらうためにも
地方中小企業の経営者には
労務管理の知識は必須です。

私にとっては
労働経済判例速報が
貴重な情報源となっていました。

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