意思決定の記録を残す
地方中小企業に関わっていると、
営業会議や取締役会の
議事録が作成されていないことが多いと感じます。
取締役会の議事録を辿った
家業の代表取締役に就任した時、
真っ先にしたことの1つが、
取締役会の議事録を読むことでした。
家業であるので、
大まかにはいつ何が起こったかは
把握しているつもりでした。
しかし、
実際に議事録を読み始めると、
当時の経営者の意思決定の過程などを
体感することができ、
新米社長にとって、
またとない貴重な資料であることに
改めて気付くことができました。
例えばある時期の取締役会では
物流倉庫用の不動産取得について
繰り返し熱心に議論していただとか、
創業者一族間の不和を解消するために
頭を悩ませていただとか、
といった当時の経営者の
息づかいを感じることができました。
会話形式で精緻に記録を残している時期もあれば、
議題と結果だけを
箇条書きで記している時期もあります。
もちろん、
会話形式の方が情報量は多いわけですが、
箇条書き形式であっても
それなりに読み取れることがあり参考になりました。
記録を残さないことの弊害
中小企業支援家に転身し、
地方中小企業の経営者と対話を重ねています。
その過程で過去のことをお尋ねすると、
創業者であればもちろん、
創業から現在に至る歩みを熱く語ってくれます。
ところが後継者や雇われ経営者となると
とたんに過去の経営を把握していない方が多いです。
よくよくお話を伺うと、
営業会議や取締役会の議事録を
残していない会社であることがほとんど。
過去の資料を残していないというのは
大きな損失です。
なぜなら
・意思決定に責任を持たない文化になる
・過去から学ぶことができない
という理由です。
記録を残すのは将来世代のため
それぞれ説明します。
まず企業文化に与える悪影響についてです。
議事録を残さないと、
発した言葉が将来に向かって責任を伴いません。
つまり、言いっぱなしになってしまいます。
その時々で、
思いつきや耳障りの良い言葉だけが蔓延していきます。
事業を存続させ、
持続可能な状態を担保するためにも
意思決定の記録を残し、
役割に関係なく、
発した言葉に責任を持つ文化を醸成することは
経営の重要な役割の1つだと考えています。
次に過去から学ぶことができなくなることについて。
冒頭で私が自分の体験をお伝えしたように、
会社の意思決定の過程は、
重要な資料となり得ます。
マニュアルやノウハウも重要ですが、
それ以上に過去の歩みから学べることもあります。
同じようなことばかりが書いてあるビジネス書や
建前論ばかりを振りかざす、
自称コンサルタントからよりも、
歴史から学べることは多いのです。
意思決定の過程を
将来世代に残すのは、
現在の会社に関わる者の重要な責務。
言葉に責任を持たない文化としてしまうのか、
あるいは
行き当たりばったりの経営を繰り返すのか。
まずは営業会議と取締役会の議事録を作成しましょう。
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