地方中小企業が持続可能性を高めるための踏み台になります

050-3557-7157

コラム

家業を倒産させた経営責任

地方中小企業を倒産させた経営者には
どのような経営責任が発生するのでしょうか。

私の経験を書いてみます。

家業を倒産させた経営責任

2015年に家業を
投資ファンドに事業譲渡しました。

第二会社方式により、
投資ファンドが設立した新会社へ
茶わん屋の事業をそのまま譲渡し、
残った従来からの法人は特別清算しました。

「事業譲渡」というと聞こえは良いですが、
資金繰り破綻をギリギリで回避し、
金融機関への返済を大幅に免除してもらい、
なんとか事業を存続させたというのが実態です。

言い換えれば、家業を倒産させたわけで、
最後の経営者であった私には
経営責任が発生したことになります。

経営者保証を行っていた

元々、会社の借入金に対して、
経営者保証を行っていました。

経営者保証とは

中小企業が金融機関から融資を受ける際、経営者個人が会社の連帯保証人となること(保証債務を負うこと)。企業が倒産して融資の返済ができなくなった場合は、経営者個人が企業に代わって返済することを求められる(保証債務の履行を求められる)。中小企業庁HPより

です。

まだ社長在任中のある時、
経営者保証の手続きで
メイン銀行の担当者がやってきました。

ふと気になった私は
「資産の無い私が個人保証をすることに
何の意味があるのですか?」
と尋ねました。

持ち家があるわけでもないですし、
株や貯金などもほぼゼロの当時の私。

経営者保証をすることに
何の意味があるのか聞いてみたくなったのです。

担当者は
「万一の際に、
責任者を明確にするためです」
と返事をしてくれました。

その時、私は
経営破綻時に経営者を逃がさず
何らかの経営責任を取らせることが
経営者保証の目的なのだなと理解しました。

印鑑と朱肉

実印を押印する前には書類の内容を十分に検討しましょう

倒産後の経営責任の取り方

投資ファンドに事業譲渡した後、
つまり家業を倒産させてしまった後、
私の経営責任はどうなったでしょうか。

経営者保証をしていたので、
銀行から十数億円の返済を迫られたり、
返済ができない場合は
自己破産せざるを得なくなることを
想定していました。

しかし実際には
「何も求められなかった」
のです。

どういうことかというと、
ある銀行の方が言うには、

1.高幸社長には返済できるような資産は無い

さらに、

2.業績が窮境に陥った、
過去からの責任は高幸社長には無い

3.在任中に過大な報酬を受け取っていない

4.それどころか在任中の経営悪化に対して、
その時々、報酬減額などの責任を取ってきた

ということで
返済も求められず、
自己破産も要求されなかったのです。

経営者保証をしていたにもかかわらず、
このような処遇をしてくれたのには
取引金融機関に感謝しかありません。

おかげで
第二の社会人人生を始めるに当たって、
社会的な信用を失うことにもなりませんでしたし、
創業融資を実際に受けることができたり、
継続してクレジットカードを利用できたりと、
金融的な信用も損なうことがありませんでした。

以上はあくまで私の実体験です。

こうして家業の経営破綻をお伝えしていると
講演を聴いていた方などから
「実は父は自己破産をしている」
だとか
「実家の家業が倒産し苦しい思いをした」
といったお話しをいただくこともあります。

さて、その経営者保証の慣行が
見直される方向だそうです。

中小企業の融資保証、金融庁が11年ぶり改正 起業を支援:
2022年11月3日 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB014BN0R01C22A1000000

経営者保証自体が悪い慣行だとは思いませんが
必要以上に経営者を圧迫しているならば
本末転倒の取り組みになってしまいます。

必要の無い経営者保証が行われなくなり、
経営者が純粋に
経営に集中できるようになればうれしいです。

関連記事

TOP