事業を存続させるために変化し続ける
祖業にこだわり続けると
消費者と時流の変化を見失い、
事業の持続可能性を損ないかねません。
ある製薬会社の新事業
江戸時代から続く
製薬会社を支援した事例です。
新たに一般食品製造を始めるとのことで
年配の取締役が相談にいらっしゃいました。
業績自体は堅調で
本業は多くの顧客からの注文で
忙しい状態だとのこと。
なぜそんな時期に
新規事業を始めるのか尋ねたところ、
「まだ若い従業員の将来のために
新たな事業を始めておきたい」
とのことでした。
その後しばらく連絡が途絶え、
新商品を発売後に
今度は若い従業員の方がいらっしゃいました。
その後の支援の様子は
下記のように寄稿しています。
西日本新聞に寄稿した中小企業支援に関するコラムです。 【商いのヒント エヌビズの支援事例から①】 福岡県直方市にある直鞍ビジネス支援センター(エヌビズ)は、市産業振興アクションプランに基づき、2017年1月に設置されました。直方市を中心とし、宮若市、鞍手町、小竹町を主な相…
企業が手掛ける事業は
必ずしも永続するものではありません。
また長く継続することができたとしても、
いつまでも稼ぎ続けることが
保証されているわけでもありません。
となると企業に求められるのは
常に次の「金のなる木」を
育て続ける姿勢です。
この会社の取締役のように、
今すぐは必要ないとしても
将来の持続可能性を担保するために
新事業を生み出し続ける覚悟が
必要なのです。
家業が窮境に陥った原因
反対に私の家業は
変化し続けることを忘れたために
窮境に陥ることになりました。
戦後まもなく法人化し、
全国の百貨店に出店することで
会社を大きく成長させ、
その過程では様々なイノベーションに
取り組み続けていました。
例えば
頒布会形式での販売
季節感を感じさせる演出陳列
国産洋食器の販売
といった取り組みです。
今となっては
珍しくもない取り組みですが、
当時はそれぞれが画期的な
取り組みであったといいます。
しかし
いつしか変化し続ける気概が失われ、
中元・歳暮などのギフト商材に
頼り切るようになってしまいます。
またかつては
画期的な取り組みであったことに
いつまでもしがみつくようになり、
変化し発展させることを
恐れるようにもなってしまいました。
変化を忘れた家業は急失速します。
1990年頃が業績のピークで、
私が投資ファンドに事業譲渡する
2015年まで業績は下降し続けたのです。
事業を存続させるために変化し続ける
私のかつての家業は
江戸時代創業の茶わん屋でした。
江戸時代から続いていたりすると
長く存続しているということだけで
「老舗」であると思われるかもしれません。
しかし実際の老舗は
しなやかに変化し続けているからこそ、
消費者と世の中の変化に対応し続け、
商売を長く続けることができているのです。
これは創業したばかりの企業にも
同じことが言えるでしょう。
ちょうど今日お話しした、
創業8ヶ月の社長は
当初想定していた事業はひとまず棚上げし、
別事業を深掘りして
会社を成長させることを検討していました。
創業時の事業に固執することなく、
しなやかに事業を
変化(ピボット)させることは
多くの創業者が経験していることです。
経営者に求められる資質の一つは
変化を恐れないことです。
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