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コラム

老舗は長く商売しているから老舗と呼ばれるわけではない

先日、大学のオンライン授業で講演をしました。
その際にお話ししたことを抜粋して書いてみます。

「ブランド」への誤解

よく耳にするのが
「新しいブランドを立ち上げました」
「パッケージとロゴのデザインを一新し、
ブランディングを行いました」
といった類いのコメント。

多くは創業を志している方や、
新規事業に取り組むアトツギなどからの
言葉であることが多いです。

これに対して私は、
「ブランドは顧客に認めてもらって成り立つもの」
「見た目をいじることがブランディングではない」
「商品を磨き上げることが、
結果、ブランドと認知されることに繋がる」
などとお話しするようにしています。

同じような会話の流れで、
「岡田のかつての家業のように
ブランドを形作るにはどうすればよいか?」
と聞かれることがあります。

これに対しては
家業が取り組んできたイノベーションの歴史と、
その後、
イノベーションを怠ったが故に窮境に陥り
事業譲渡せざるを得なくなったことをお伝えした上で、

「老舗は長く商売をしているから老舗なのではなく、
しなやかに変化し続けてきたからこそ
顧客に長く応え続けることが可能となり、
結果、老舗・ブランドとして認められる」

というようにお答えしています。

家業のイノベーションを紐解く

家業には幸い、
戦後に法人化してから
成長していく過程を記した
古参従業員の手記が残っています。

社史のような固いものではなく、
当時の息づかいが感じられる読み物です。

そこに記載されているのは
家業が元から「ブランド」であったのではなく
イノベーションに取り組み続けたからこそ、
結果、
老舗・ブランドと呼ばれるようになった道のりです。

例えば

  • 昭和25年7月に発生した店舗の火災をきっかけに
    全国各地の窯元の商品を取り扱うようになった
  • その後の新店舗建設を契機に
    季節毎の演出を意識した陳列を始めた
  • 店舗内の奥まった一室を「特選室」として、
    選りすぐった逸品をお得意様向けに販売した
  • ホテルや旅館のロゴを印刷した灰皿を製作し、
    サンプルを送付後に注文をいただく
    「サンプルセール」ビジネスを始めた
  • 毎月、商品をお届けする(今で言うサブスクに近い)
    頒布会形式での商品販売を始めた

といった当時の取り組みが詳細に語られています。

たち吉本店(大正初期)

老舗は変化し続けているから生き残ることができています

成長している時にこそ新規事業を始めるべき

私が家業を通じて学んだのは、
「金のなる木」にいつまでもしがみついていると、
いつのまにか衰退が始まってしまうということ。

家業の場合は百貨店でのギフト需要を捉え
1990年頃まで
会社を大きく成長させることができました。

しかし、その後、
百貨店業界自体が苦戦し始めても
戦後間もない頃のように
新規事業に挑戦することはなく、
「いつか売上は回復するだろう」という
根拠のない予測、
つまり正常性バイアスに囚われてしまいました。

戦後間もない時期には
店舗を火事で失ったとしても
逆境に下を向くことなく、
ピンチをチャンスに変えることができていました。

いつしかそうした進取の気性が失われ、
「金のなる木」にしがみつくような文化の
会社になってしまったのです。

ピンチをチャンスに変える、
あるいは
成長している時にこそ挑戦を始める。

しなやかに変わり続けないことには
事業を成長させるどころか
存続させることもできなくなってしまうのです。

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