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コラム

地方中小企業の品質管理

家業の代表取締役在任中に、品質に関わる不祥事を出してしまったことがあります。

規制値を超える鉛を検出

新聞記事から引用します。

製造した食器から規制値を超える鉛が検出されたとして、岐阜県は二十日、食品衛生法に基づき、同県瑞浪市山田町の陶磁器製造販売会社「萬皿屋」に回収命令を出した。食器は京都市の老舗陶磁器販売会社「たち吉」に出荷していた。

県によると、商品名は「黄地草花小鉢」(直径十四センチ、深さ四.三センチ)。昨年十二月五日に製造され、五個一組で百八十セットを出荷した。鉛はうわぐすりに含まれているという。

県が年間を通じて行っている東濃地方の陶磁器製造会社を対象にした抽出調査で判明。溶出試験で規制値(一ミリリットル当たり二マイクログラム)を超える六.六マイクログラムの鉛が検出された。

たち吉は全国の百貨店やインターネットなどで陶磁器を販売している。問題の食器の販売先は今後、京都市が調べる。

2012年1月21日 中日新聞「陶磁器に鉛 規制値超 瑞浪の業者に回収命令」

このように食品衛生法の規制値を超える商品を出荷してしまった事案です。

陶磁器の釉薬には発色を良くするために鉛の成分が一定量含まれます。鉛自体が人体に有害であるので、法で規制されているものです。

この件が発覚した後に手配した対応としては、

①当該ロットに限定せずに同商品すべての回収を目指す

②全国紙に回収のお詫びとお知らせを掲載

③自社および全国の店頭で回収を実施

というものでした。

当該ロットに限定することなく同商品をすべて回収するという方針で臨んだことで、状況次第では深刻な経営上のダメージを負うことも覚悟していました。それで倒産したならしようがないという気持ちでした。

精一杯、回収している旨を告知したものの、実際の回収数は数十セットに留まりました。規制値を超えた商品もただちに健康に影響のないレベルであるということで、行政からは事態の収束を認めてもらうことができました。

業績が悪化し続ける中で発生した品質上の不祥事。第一報が入った際には大きな騒ぎにしたくないという担当部署の意見もありましたが、トラブルには真っ正面から向き合う方針を指示し、結果、経営上のダメージをほとんど発生させずに終息させることができました。

パナソニックのドアホン欠陥問題の原因は「サイレントチェンジ」

(日経xTECH 日経BP専門誌から) 

パナソニックのドアホン欠陥拡大: 日本経済新聞 

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO64620340W2A920C2XV7000

2022年9月27日の日経産業新聞にこのような記事がありました。有料記事ですので引用は控えますが、入念な品質対策を進めてきたパナソニックであっても、部品・材料メーカーが「サイレントチェンジ(沈黙の変化)」をしたために欠陥商品を市場に出してしまったというものです。

「サイレントチェンジ」とは、部品・材料メーカーが納入仕様書で決められた組成とは異なる材料を、無断で使用してしまうもの。

まさに家業の不祥事も原因は同じでした。商品開発時に入念に食品衛生法に基づく自社検査を行ってクリアしていたはずなのに、数年後に行われた県の抜き取り検査で規制値超過が発覚。製造メーカーに罰則を科さないことなどを約束してヒアリングした結果、原材料の無断変更が行われていたことがわかったのです。

化学実験に使うガラス機器類

食品衛生法に基づく検査を自社でも行っていましたが不祥事を防ぐことはできませんでした

仕入先様との関係性構築がまず第一

パナソニックの事例では取引先に誓約書を提出させていたそうです。

私が家業で法人営業をしていた際にも、日本を代表するような広告代理店から同様の書類の提出を求められたことがありました。また大きな印刷会社からは、受注をするたびに詳細な仕様書や作業環境を明らかにする資料の提出を求められたものです。

資料を提出させれば、書類上の「アリバイ」は得られるのかもしれません。しかし必ずしもトラブルを防ぐことができないのは事例からも明らかです。

地方中小企業の品質管理に必要なのは、仕入先様との関係性構築がまず第一。品質管理上の隙を見せない毅然とした姿勢は保持しつつ、事業のパートナーとして何でも話せる信頼関係が必要。私が自社の不祥事から学んだことの一つです。

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