誰でもできることだけを手掛ける士業に未来はない
士業には法律で「独占業務」が定められています。資格を持っている者しか手掛けられない業務があるのです。このいわば参入障壁により、これまで手厚く保護されてきた士業。しかしいつまでも守られている存在であるかというと私は怪しいと考えています。
freee株式会社の新サービスの衝撃
freee株式会社が新しいサービスを開始するそうです。
freee、行政手続きの新プロダクト「freee登記」「freee許認可」を発表
Yahoo!ニュース2022年9月8日
詳細は記事を読んでいただくとして、「freee登記」は、法人の変更登記書類をオンラインで作成できるサービス、「freee許認可」は、許認可申請をオンラインで完結させることができるサービスだそうです。
この2つの新サービスは前者は司法書士、後者は行政書士が業務として行っています。
私のように例えば社会保険労務士だからと言って、本件を自分に関係ないこととするのはもったいないことです。資格を持たない人がオンラインで簡単な手続きを済ませてしまえる時代に、士業はどう対応していけば良いのか。言い換えれば、どのように自身をブランディングしていけば良いのかを考えるきっかけにできます。
独占業務を盲信しない
我々士業は、独占業務からの売上を過信しないことです。無形のサービスを提供している士業にとって、独占業務はいわば「飯の種」。しかし、独占業務ばかりに頼り切った経営を行い、質的改善をおろそかにしていると、そのうちいつか足をすくわれることになるでしょう。
世の中には同じような独占業務を提供している同業者がいくらでもいるわけです。消費者が多くの士業事務所の中から発注先を選ぶのには理由があります。士業側が意識してその理由を提供できていないと、地理的な近さや価格だけで比べられることになってしまうのです。
では何を消費者から選ばれる理由として提示すればよいのか。それは「個性」です。独占業務に守られていることに慢心せず、幅広い知識と経験に裏付けされた独自の立ち位置、つまり個性を消費者に提示しましょう。そしてその個性を積極的に発信して知らしめておくのです。
私の場合は、社会保険労務士という資格を有していても、それだけで食べているわけではありません。世の中には社会保険労務士の大先輩がたくさんいらっしゃるので、社労士業務だけでは消費者に選ばれることはないのです。
ではどうしているのか。私は「地方中小企業の経営経験のある社会保険労務士・経営コンサルタント」として独自の立ち位置を築くように努力しています。顧客に提供しているのは経営者との月1回1時間の面談。社会保険労務士の独占業務として定められている業務は、私の顧客からは特に求められていないのです。残念ながら。
ある行政書士の事例
開業したばかりの行政書士さんをご支援したことがあります。
その方の認知度向上に利用したのは、資格でもなく知識でもありませんでした。SDGsに知見があるとのことでしたので、小学校で特別授業を行ってもらったのです。その結果どうなったか。同じ行政書士に仕事を頼むなら、新聞に取り上げられていたSDGsに詳しい○○先生に依頼しようということになり、地域の中小企業から仕事の依頼が相次ぐことになったのです。
同じ士業であっても、個性を強みにすれば独自の立ち位置を築くことが可能です。資格を持っていれば誰でもできる業務を行っているだけでは、独自の立ち位置を築くことはできません。独自の立ち位置、つまりブランディングがなされていれば、多くの同業者の中から選ばれる確率が高くなるのです。
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