地方中小企業のアトツギが事業承継後に真っ先にすべきこと
ある日突然、経営者になったとしたら、まずは何をするべきでしょうか。
就業規則の確認
会社で働くためのルールを定めたのが就業規則です。この就業規則の中身を把握していない経営者が案外、多いものです。
少数精鋭で長年奮闘している地方中小企業の場合、特にトラブルがなければ就業規則を気にすることなく何年も過ごしていることがほとんど。
以下のような状況の会社はないでしょうか?
・だいぶ以前に定めた就業規則を改訂せずに放置していて、現在の状況に合致しないものになってしまっている
• その都度、就業規則を改訂してきているが、どの項目が生きていて、どの項目が削除されているのかがわからなくなってしまっている
・社長が独断で定めた「ルール」を就業規則と称していて、従業員代表の意見を聞いておらず、もちろん労働基準監督署にも提出していない
いずれも私が見聞きしてきた中小企業の状況です。
もし経営者になるのであれば、そして従業員を雇用しているのであれば、就業規則の状況と内容は真っ先に確認しましょう。
金融機関との関係性の把握
すべての地方中小企業は銀行と取引があります。先代が銀行との関係性を精緻に後継者に引き継いでくれることがあればそれでよし。もし引継ぎがなされていなければ、過去にさかのぼって取引の状況を確認しましょう。
私の場合は業績が19年間も悪化し続けている会社を事業承継しました。そのため、銀行から支援を継続してもらうよう立ち回るのは、経営者の最も重要な業務の一つでした。
支援を継続してもらいたいと考えるのであれば、過去からの経緯を把握することが必要です。言い換えれば、どうしていまのシェアと融資額になっているのかを理解しなくてはなりません。
さて、過去の銀行との関係をどう調べるか。お勧めするのは取締役会の議事録を確認する方法です。
季節性の運転資金の他にイレギュラーに必要になった資金については取締役会で議論していることがほとんど。その当時、どういった経緯で銀行に支援を求め、どういった対応がなされているのかは取締役会の議事録を読めば大まかに経緯をたどれるはずです。
銀行は銀行の論理で中小企業と対します。その銀行と健全な関係性を維持するためにも、どのような過程を経ていまの状況(シェアや融資額)に至っているのかを把握しましょう。
顧客の声に耳を澄ます
売上や利益は商売の結果です。結果が出るまでには営業活動があり、顧客とのコミュニケーションが大なり小なり発生しています。
もし地方中小企業の経営者になったのであれば、まずは顧客の声に耳を澄ませましょう。顧客の声には自社の真の強みが隠されています。
商品やサービスがなぜ消費者に選ばれるのか、もしくはなぜ十分な数の消費者に選ばれないのか。そのヒントは顧客が語ってくれています。
ある企業からコンサルティングを依頼された時の事例です。
売り上げを維持するのにいっばいになってしまっており、バーゲンや催事を繰り返しては現場がどんどん疲弊していく状況でした。
私が行ったのはもちろん顧客の声の分析。店舗から寄せられていたものを集め、会社の強みが何なのかを探ろうとしました。
そこから見えてきたのは顧客が求めている取り組みです。具体的には会社とつながる機会(=リアルのイベント)を顧客は求めていることがわかったのです。それまでバーゲンや催事を乱発し、売りっばなし状態になっていたのを改め、顧客と関係性を深めるための販促策を始めることにしました。
社長に就任したばかりの時期は、従業員や取引先とばかり関わりを持ってしまいがちです。意識して顧客の声に耳を澄ませ、売上アップのヒントを見出しましょう。
関連記事